「生活保護を申請したいけど、色々な制限がありそうで不安…」
「ケースワーカーから言われたことに納得できない時、どうすればいい?」
「うっかりミスで、不正受給と疑われたらどうしよう…」
生活保護は、私たちの暮らしを守るための大切なセーフティネットです。しかし、制度の仕組みが複雑な上、世間には多くの誤解や偏見も存在するため、利用する際に多くの疑問や不安を感じる方は少なくありません。
この記事では、生活保護を申請する前や利用中によく聞かれる質問、そして陥りがちなトラブルについて、Q&A形式で分かりやすく解説します。正しい知識を身につけ、安心して制度を活用しましょう。
Q1. 貯金は1円も持てないのですか?
A. いいえ、ゼロにする必要はありませんが、高額な貯蓄は認められません。
生活保護制度は「生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い…」と定められています。そのため、生活を維持できるだけの貯蓄がある場合は、まずそれを使って生活することが求められます。
しかし、「貯金が0円でないと申請できない」というわけではありません。自治体によって基準は異なりますが、一般的には**「最低生活費の半分程度」**までであれば、保有が認められることが多いです。急な出費(冠婚葬祭、家電の故障など)に備えるためのお金として、ある程度の貯金は許容されています。
ただし、これを大幅に超える貯金や、生活保護費を切り詰めて貯蓄に回す行為は、指導の対象となる可能性があります。
Q2. 車の所有は絶対にダメですか?
A. 原則として、資産価値のある車を所有することは認められません。しかし、例外もあります。
車は「資産」と見なされるため、原則として売却して生活費に充てるよう指導されます。
ただし、以下のような**「特別な事情」**がある場合は、例外的に所有が認められるケースがあります。
- 公共交通機関が極端に少なく、車がないと通勤や通院が著しく困難な場合。
- 障がいがあり、移動手段として車が不可欠である場合。
- 事業用(個人タクシーなど)で、それが自立につながると判断される場合。
これらの場合でも、車の資産価値が低く、維持費が過大でないことが条件となります。所有を希望する場合は、自己判断せず、必ずケースワーカーに事情を説明し、許可を得る必要があります。
Q3. 借金があると、生活保護は受けられませんか?
A. 借金があっても、生活保護の申請・受給は可能です。
借金の有無は、生活保護の受給要件とは直接関係ありません。「借金があるから受けられない」ということはないので、ご安心ください。
ただし、一つ重要なルールがあります。それは、**「生活保護費から借金を返済することは原則として認められていない」**という点です。生活保護費は、あくまで最低限度の生活を保障するためのお金であり、過去の債務返済に充てることは制度の趣旨に反すると考えられています。
そのため、保護が開始されると、ケースワーカーから弁護士や司法書士への相談を勧められ、自己破産などの債務整理手続きを行うよう指導されるのが一般的です。法テラス(日本司法支援センター)を利用すれば、無料で法律相談を受けることも可能です。
Q4. 働いて収入を得たら、すぐに保護は打ち切りになりますか?
A. いいえ、収入が最低生活費を上回らない限り、すぐに打ち切りにはなりません。
むしろ、働く能力のある人には、その能力に応じて働くことが求められます。働くことは、生活保護からの自立に向けた重要なステップとして推奨されています。
働いて得た収入は、全額が保護費から引かれるわけではありません。収入から税金や社会保険料、交通費などの必要経費が引かれ、さらに**「基礎控除」**として一定額が差し引かれます。その残りの金額(収入認定額)が、支給される保護費から減額される仕組みです。
基礎控除があるため、働いた分だけ手元に残るお金が増え、生活に少しゆとりが生まれます。正直に収入を申告し、自立を目指しましょう。
Q5. 親や兄弟に連絡(扶養照会)が行くのを止められますか?
A. 原則として扶養照会は行われますが、拒否できるケースもあります。
民法上、親子や兄弟姉妹など三親等内の親族には、互いに扶養する義務(扶養義務)があります。そのため、福祉事務所は保護申請があった際に、親族に対して「援助は可能ですか?」と手紙などで確認(扶養照会)を行います。
しかし、この扶養は強制力のあるものではなく、あくまで「お願い」です。また、以下のような事情がある場合は、照会をしない、あるいは中止するよう相談できます。
- DVや虐待の過去があり、連絡を取ることで身の危険が及ぶ場合。
- 10年以上など、長期間にわたって音信不通の場合。
- 相手が借金を重ねている、病気であるなど、扶養が期待できないことが明らかな場合。
こうした事情がある方は、申請時に正直にケースワーカーに伝えましょう。一人で伝えるのが不安な場合は、支援団体のスタッフなどに同行してもらうのも有効です。
トラブル事例:ケースワーカーとの関係が悪化したら?
残念ながら、ケースワーカーの中には高圧的な態度を取ったり、制度について誤った説明をしたりする担当者もいます。もし、理不尽な対応を受けて困った場合は、一人で抱え込まずに行動しましょう。
- 記録を取る:「いつ、どこで、誰に、何を言われ(され)たか」を具体的にメモに残します。冷静に事実を記録することが重要です。
- 上司に相談する:福祉事務所には、ケースワーカーを監督する立場の上司(査察指導員、スーパーバイザーなど)がいます。「担当の〇〇さんの説明に納得できないので、上司の方とお話ししたい」と伝えましょう。
- 外部機関に相談する:弁護士会、司法書士会、法テラス、または生活困窮者の支援を行っているNPO法人などに相談するのも有効な手段です。客観的な第三者が間に入ることで、状況が改善されることがあります。
まとめ:正しい知識で、自分の権利を守ろう
生活保護は、困ったときに誰でも利用できる国民の「権利」です。しかし、その権利を正しく行使するためには、制度についての正しい知識が不可欠です。
特に**「収入や資産の変動は、どんな些細なことでも必ず申告する」**という点は、不正受給を疑われるなどの無用なトラブルを避けるために最も重要です。
この記事で紹介した以外にも、疑問や不安は尽きないかもしれません。そんな時は、決して一人で悩まず、担当のケースワーカーや信頼できる支援団体に相談してください。あなたの新しい生活が、より安心できるものになることを心から願っています。